■はじめに

 2019年6月28日、29日に大阪でG20が開催され、2050年までにプラスチックごみの海洋投棄をゼロにすることが、首脳宣言に盛り込まれた。G20に先立ち、日本は「プラスチック資源循環戦略」を発表し、その中には海外展開についての記載もあるように、我が国の知見を活用し、日本のみならず世界のプラスチックごみの削減に向けた貢献が求められている。

本稿では、海洋プラスチックごみについて、排出量が中国に次ぐ第2位といわれるインドネシアに注目した。インドネシアについては、G20に先立つ6月27日に、日本の環境省と同国の海洋調整府との間で、海洋プラスチックごみ対策を含む共同声明を発表しているように、我が国による貢献が期待されている。

以下では、プラスチックごみの発生動向、処理の現状、海洋プラスチックごみに関する法規制、民間企業の動きから、今後のインドネシアにおけるプラスチックごみ対策の動向を整理する。その上で、サーキュラーエコノミーの確立を目指すインドネシアに対する、日本によるプラスチックごみ問題への貢献可能性について考察する。

下編では、外資系企業の動きと、今後日本の官民セクターに期待される役割についても述べる。

■外資系企業を中心とした、民間企業の動き

リサイクルを進める企業連合

前述したようなインドネシア政府の動きだけではなく、外資系を中心とした、プラスチック製容器包装のリデュース、リサイクルを目指すメーカーの動きも活発化しつつある。

 背景には、2015年の欧州委員会による循環経済パッケージ(CEP)や、2018年の欧州プラスチック戦略を元に、欧州の官民セクターがグローバルなサーキュラーエコノミーの確立を目指す動きがあり、インドネシアにおいても顕在化している。

 2017年に、外資系企業であるユニリーバ、ネスレ、コカコーラ、ダノン、テトラパックと、インドネシアの食品加工最大手メーカーであるインドフードは、容器包装材のリサイクル推進等を目的とした団体PRAISE(Packaging and Recycling Association for Sustainable Environment in Indonesia)を発足させた。PRAISEは、各社が独自に取り組む包装材のリサイクル等に関する知見を共有しながら、1.容器包装材チェーンにおける技術や流通革新、2.回収ネットワークの拡充、3.分別インフラの強化、4.付加価値の高い製品を製造するためのリサイクル技術開発支援の4分野を中心とした活動を行っている。近年では、環境林業省や環境NGOと協力し、100箇所への分別回収ボックスの設置と、有価物の回収に取り組んでいる。

PRAISEが設置した分別回収ボックス

ユニリーバの取り組み

PRAISEにおいて中心的な役割を果たしているのはユニリーバである。前項で紹介した、インドネシアにおけるユニークな有価物回収システムであるごみ銀行は、ユニリーバの支援によって、2006年にスラバヤ市で開始されたという経緯がある。ユニリーバが支援するごみ銀行は、2018年には18都市の2800コミュニティーへと広がり、年間7,800トンの容器包装材を回収している。

ユニリーバは、2018年に日量3トンの複層プラスチック製の袋をリサイクルする施設を、東ジャワ州に建設している。欧州のフラウンホーファー研究機構が開発した技術を活用しており、複層プラスチックを使用している包装材からポリエチレンを回収することができる。建設した設備は小規模のパイロット事業であるが、インドネシアではリサイクルが困難であった複層プラスチック製の小袋を、ごみ銀行などを通して回収し、マテリアルリサイクルした上で包装材として再利用するという、リサイクルループの構築を目指した取り組みとなる。

また、ユニリーバとヴェオリアは2018年に、プラスチック容器包装を対象としたサーキュラーエコノミーの確立を目指した提携を締結した。対象はインドとインドネシアであり、プラスチック製の容器包装材の回収とリサイクルを進めるとしている。ユニリーバは、2025年までにプラスチック製の容器包装材を全て再利用可能、リサイクル可能、コンポストにすることを掲げている。また、2025年までには、パッケージに使用するプラスチックのうち少なくとも25%は再生プラスチックを使用することを表明している。

ユニリーバにとって、インドネシアはプラスチック製の容器包装材を使用した製品の最大市場の一つであり、ヨーロッパのプラスチック戦略を背景に、様々な取り組みを実施すると考えられる。

外資系企業の狙い

インドネシア政府が進めようとする、拡大生産者責任(EPR)を導入するためには、政府と民間企業の連携が肝要となる。外資系を中心とした民間企業はESGやSDGsへの明確なビジョンと、欧州の戦略を背景に、プラスチック製の容器・包装材のリデュース、リサイクルに自主的に取り組もうとする動きがあり、EPRの制度設計を先導する可能性すらあるだろう。

外資系企業と欧州連合が協力し、インドネシアにおける拡大生産者責任の制度設計をリードし、リサイクルに前向きではない企業を市場から締め出すような仕組みを作り上げる。また、プラスチックのリサイクルについても、官民協力による制度設計への支援を行いながら、欧州のリサイクラーがインドネシアに進出し、マーケットをリードする。外資系企業と欧州連合がこのような戦略を持っていると考えるのは、杞憂だろうか。

■日本の役割

日本政府は2018年に「プラスチック資源循環戦略」を策定した。その中には、海外展開にかかる記載もある。

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(3) 国際展開

① 途上国における海洋プラスチックの発生抑制等、地球規模での実効性のある対策支援を進めていきます。

具体的には、各国に適した形での適正な廃棄物管理システムを構築し、資源循環の取組を進めていくことが喫緊の課題であり、我が国の有する

・分別収集システム、法制度等のソフト・インフラの導入

・リサイクル・廃棄物処理施設等のハード・インフラの導入

・廃棄物の適正な埋立指導や現地の人材育成、環境教育等のキャパシティビル

ディング

・プラスチック代替品やリサイクル技術等に関するイノベーション・技術導入の支援など、アジア・太平洋、アフリカ等の相手国ニーズ・実情に応じたオーダーメイド輸出により、我が国産業界とも一体となった国際協力・国際ビジネス展開を積極的に図ります。

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プラスチック資源循環戦略における国際展開より引用

 

ソフト・インフラの導入、ハード・インフラの導入、キャパシティビルディング、プラスチック代替やリサイクルに関するイノベーション・技術導入という4点については、これまで見てきたインドネシアの取り組みと一致することが分かる。

 これまでも、インドネシアの廃棄物管理について、日本は様々な支援を行ってきた。そうした知見を活用しながら、改めてインドネシアのプラスチックごみ処理の動向を注視し、適切なサポートを行いつつ、我が国の静脈産業が国内で実践してきた様々なビジネスを展開していくような戦略を策定することが必要となる。例えば、インドネシアで導入が検討されている、拡大生産者責任(EPR)やリサイクルの推進については、日本の官民が連携して実現しているペットボトルやプラスチック製容器包装のリデュース、リサイクルの実績を元に、制度設計の面からも、技術開発の面からもインドネシアのプラスチックごみ問題に貢献することができるだろう。

都市部において導入が検討されている廃棄物焼却発電についても、我が国において官民が協力して進めてきた実績を活用する余地は十分にある。プラスチック等の有価物をなるべくリデュース、リサイクルした上で、サーマルリサイクル(熱回収)を導入することは、一つの最適解であり、日本には比類の無い実績がある。  政府と民間が協力して戦略を策定し、プラスチックのサーキュラーエコノミーの確立を目指す欧州と比較すると出遅れ感は否めないものの、インドネシア等の新興国において、我が国が培ってきたリサイクル制度や技術を活用できる余地は大いにある。政策支援や、具体的な環境技術の輸出を「局地戦」で行うのではなく、政策支援、制度設計、環境技術の適用、リサイクルビジネスの展開を包括的に捉え、官民が連携してインドネシアに展開することが理想的な姿であろう。

(完)

(NTTデータ経営研究所 マネージャー 東 信太郎)


*本記事に掲載している写真と本文は関係がありません

この記事を書いた人

THINK WASTE 編集部

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