植物原料のさらなる有効活用を可能に〜JST(科学技術振興機構)戦略的創造研究推進事業

JST(科学技術振興機構)戦略的創造研究推進事業において、東京農工大学の梶田真也准教授らは、植物の細胞壁に多量に蓄積するリグニンを、より分解しやすい構造に改変するための新しい技術を開発した。

リグニンは、植物の細胞壁に含まれる複雑な構造をした高分子(芳香族ポリマー)。紙や繊維、飼料などには、植物の細胞壁を原料とした素材が豊富に存在する。植物の細胞壁は一次壁と二次壁に大別されるが、一般に二次壁は一次壁よりも厚く、その主成分としてセルロースやヘミセルロースなどの多糖類に加え、芳香族ポリマーであるリグニンを20~30%含む。細胞壁の多糖類は、紙や繊維の原材料となり、最近ではバイオエタノールやバイオプラスチックなど、液体燃料や化成品の原料としての利用も検討されている。

植物の生存にとって重要なリグニンは、植物を工業原料として利用する際には邪魔になることが多く、何らかの方法でリグニンを多糖から分離する必要がある。技術開発が進む植物バイオマスからのバイオエタノールやバイオプラスチックの製造に際しても、同様の方法でリグニンを分解・除去することが必要となるが、現在の処理方法では莫大なエネルギーを消費する。一方でリグニンを取り出しやすくする遺伝子工学技術も研究されてきたが、リグニンを改変した植物が正常に育たないという問題があった。そのため、生育に影響を及ぼさない新しいリグニン改変技術の開発が望まれていた。

同研究グループは、リグニンを分解するバクテリアSphingobium(スフィンゴビウム)sp.SYK-6株を単離し、分解反応に関わる遺伝子を網羅的に解析した。その結果、このバクテリアには、植物がリグニンを合成するために持っている代謝経路を改変するために有効な遺伝子がいくつも存在することが明らかになった。今回は、そのうちの1つであるLigD遺伝子を植物に導入し、植物の生育に影響を及ぼすことなく、リグニン分子に特徴的なβ-O-4型構造の一部を改変することに成功した。これにより、アルカリ反応液中でリグニンの分解性が向上することが期待される。

この技術をさらに発展させ、分解性の高いリグニンを植物に蓄積させることができると、リグニンの除去に必要なエネルギーや薬品の消費を格段に減少させることで、植物からバイオ燃料やバイオプラスチックを作る際に大気中へ排出される二酸化炭素の大幅な抑制が可能となる。また、より温和な条件でリグニンを分解することで、工程中の過度な多糖の分解も防ぐことになり、植物原料のさらなる有効活用が期待できる。

JSTは同事業において、温室効果ガスの排出削減を中長期にわたり継続的かつ着実に進めていくために、ブレークスルーの実現や既存の概念を大転換するような『ゲームチェンジング・テクノロジー』の創出を目指し、研究開発を実施していく方針だ。

LigDによるリグニン改変の原理とその効果
リグニン


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THINK WASTE 編集部

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