ESG規格統一化へ、日本も取り組み進める

気候変動や社会問題が顕在化する中、企業の持続的な成長において重要とされるESG(環境・社会・企業統治)情報開示の国際統一基準の策定へむけ、国際会計基準作りを担う国際財務報告解釈指針委員会(以下IFRS財団)*1 を中心に各国が動き出した。現在、各国・団体が気候関連財務情報開示タスクフォース(以下TCFD)の提言に基づき個別に制度設計しているため様々な基準が乱立しているが、統一基準が策定されればさらに透明性が高まる。IFRS財団が2022年6月を目処に策定を目指しており、今年10月には基準策定を担う国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が設置される予定だ。国際統一化基準をめぐり、各国の主導権争いが始まっている。

*1 国際財務報告解釈指針委員会(IFRS財団)とは、世界の金融市場に透明性や説明責任、効率性をもたらすために国際的な基準である「IFRS基準」を開発し、グローバル経済に信頼と成長、金融の長期的な安定をもたらすことを目的とした民間の非営利組織。各国・地域や会計事務所などからの拠出金が約80%の収益を占める

2020年、IFRS財団が統一基準づくりに名乗りをあげ、今年6月にはG7財務相・中央銀行総裁が指示を表明した。ESG情報開示を巡っては、TCFDに加えてグローバル・リポーティング・イニシアチブ(GRI)などの民間団体も独自の基準を設定している。ESGを重視した投資の規模は全体の約4割を占めており、国際的に投資をする機関投資家からは統一化された基準や定量指標を求める声が高まっている。

今回の統一化はTCFDの提言をベースに策定される予定だが、提言には含まれていない新たな開示項目が追加される可能性があり、各国が神経を尖らせている。独自の基準作りを行ってきたEUの基準助言組織は石炭・石油・原油など発電源別のエネルギー使用量の開示を提案した。石炭火力が主要な発電源である日本の企業としては、不利な条件となる可能性が大きい。一方カナダ、ドイツ、スイスなどはISSB本部誘致を表明しており、各国、ISSBに影響力を持ちたい状況だ。米国、バイデン政権はESGには積極的だが国際基準については方針を明確にしていない。

日本も資金拠出を表明しており、世界のESG情報開示を追随していく考えだ。日本はTCFD提言への賛同機関が最多であり、一定の評価は得ているという見方がある一方、新基準の開示項目次第では不利な状況に立たさせESG投資を呼び込みにくくなる可能性もある。今後さらに海外からの投資を呼び込みたい日本としては、今後の動きを注視しつつ対策が必要になる。今年6月、金融庁と東京証券取引所はコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を改定し、「プライム市場」の上場企業にTCFD基準での気候リスクの開示を求めた。また、日銀は9月22日、コロナ禍における大規模金融緩和政策を発表し、その一環として脱炭素につながる投融資を行う「気候変動対応オペ(公開市場操作)」の対象金融機関に、TCFD基準での情報開示を求めた。

このように日本でも国際基準でのESG情報開示が進んでいるが、ISSBの設置を巡っては少なからず出遅れている。今後、国内で迅速に議論を行い、新基準策定へ向けた日本からの情報発信が求められる。


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THINK WASTE 編集部

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