【特集】エネルギー転換期か、水素事業の潮流(国内編)

気候変動対策における水素活用の広がり 前編:日本における水素事業の潮流

はじめに 
近年、各国の温室効果ガス排出規制や代替エネルギーへの転換の必要性から水素エネルギーへの注目が集まっている。利用時に二酸化炭素を排出しない水素は、THINKWASTEでも取り上げたように(21.03.15, 21.07.19)イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国で事業が急速に拡大されている。一方、今回の東京オリンピックでも注目を浴びたように、日本でも水素事業の実用化を目指した協働・開発・実証実験は着実に増加しており、特に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)をはじめとし、地方公共団体、エネルギー・化学・物流などさまざまな事業種において水素事業導入が進められている。この記事では、前半で昨今の日本における水素事業の潮流を、後半で海外での水素事業の潮流の片鱗を紹介したい。

国内での動き
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
政府が2017年12月に公表した「水素基本戦略」を実行するにあたり、重要な役割を果たしているのがNEDOだ。2兆円規模のグリーンイノベーション基金事業を設立し、官民共同での研究開発・実証・社会実装までを継続して支援している。現在11の研究開発が基金事業として選定されており、18の企業や独立行政法人、地方公営企業が委託先に決まっている。その他にも人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)や企業、大学と共同でソーラー水素の製造などの実証実験も行っている。2021年8月には世界最大級の光触媒パネル反応システム(太陽光発電を用いて酸素と水素を分離するシステム)を開発し、世界で初めて実証実験を成功させた。その実績は科学誌「Nature」のオンライン速報版で公開された。

地方公共団体
自治体での取り組みとして、東日本大震災からの復興の一環としてNEDOが福島県江良町に世界最大級となる太陽光発電を使った水素製造施設を建設した。福島県はNEDOと「水素の利活用拡大に関する協定」を締結しており、江良町では「水素の利活用及びまちづくりに関する連携協定」を住友商事と締結している。東京都では、2021年8月から江良町で製造された水素を都内で運行するバスに使用する取り組みが開始された。また、大阪府では水素社会の実現を目指しており、8月に水素が燃料となる燃料電池バス導入の支援(上限約2600万円)を決めた。一方山梨県は、民間企業8社と共同で水素製造技術「P2Gシステム」(再生可能エネルギーなど由来の電力を活用し、水の電気分解から水素を製造する技術)実証へむけコンソーシアムを設立した。

企業
現在注目されている企業は、主に前述のグリーンイノベーション基金事業に選定されているテーマの委託先になっている企業だ。特にENEOSは11の研究開発内容のうち4つの委託先として選ばれ、そのうち3つは単独での実証事業であることから、水素事業における存在感が高まっている。また、ENEOSは国を超えて協業を模索しており、マレーシア国営石油会社ペトロナスの完全子会社PGNESBとマレーシア国内での水素供給システムの構築へむけ提携を検討している。加えて、旭化成・日揮HD・東京電力HD・関西電力・川崎重工などもNDEOの基金事業の委託先となっていおり、化学企業から物流・技術開発まで水素事業全体の底上げが図られている。その他にも中部電力や東邦ガスなど電力会社やガス会社も水素活用に前向きな姿勢を示している。さらには大手5商社も水素事業への参入を検討・開始しており、三菱商事はオランダ・ロイヤル・ダッチ・シェルの子会社、シェル・カナダとカナダ国内においての水素製造に向け覚書を締結した。今後官民共同、そして国を超えた水素事業拡大が見込まれる。

後半へ続く


【引用元】
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この記事を書いた人

THINK WASTE 編集部

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